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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

昔は蜂が怖かった。

ゼリー職人

 

 昔は蜂が怖かった。理解できない奴って、思っていたから。毒針をひっさげ、ブンブン羽をいからせ、怯えさせる。そして、私の平穏を奪っていく。蜂は私を惨めな心地にさせた。だから蜂が、心から怖かった。
 だけど最近になって、蜂のイメージが変わった。少なくとも、怖い、という感情は無くなった。ちょっぴりだけど、蜂を理解できたからだと思う。
 怖さが薄れ始めたきっかけは、ある共通点に気づいたこと。それは、私も蜂も、はちみつが大好きだということだ。蜂は少しでも美味しい蜜を得るため、あくせくお花を巡回する。そして、気に入った蜜を見つけたら、ニヤリ。笑みをこぼして、巣へ持ち帰る。
 蜂は、はちみつ探しに忙しい。だからこちらから何もしなければ、実は蜂も「我関せず。」のスタンスを貫く。こちらが放っておけば、あちらもスーッと去っていく。だけど私たち人間は、蜂を必要以上に警戒してしまう。そして、つい撃退しようとしてしまう。蜂にしてみれば、たまったものではない。ただ少しでも美味しいはちみつを得るため頑張っていただけだというのに。こうして事情を考えてみると、蜂の怒り心頭っぷりは想像に難くない。
 こんな妄想を頭で繰り広げていると、ついつい、蜂に親密さを覚えてしまった。そして私の日常にしても、蜂とさして違いがないことに気づく。
 「はちみつ食べたい。」よだれを垂らし、スーパーマーケットを徘徊する。「これは…あんまりおいしそうじゃない。これは…高すぎる。」私はこのようにしばしば、はちみつ探しの旅に出る。そして、気に入ったはちみつを見つけると、ニヤリ。笑みをこぼして、レジへ直行。
 こうして考えをめぐらすと、私も蜂も似たり寄ったりである。なんなら、私より蜂のほうが勤勉で偉いような気もする。蜂マジリスペクト。
 調べてみると、蜂が一生に集めてくるはちみつは、わずかティースプーン一杯分ほどらしい。つまり私たちは日々、蜂の一生涯を食しているということだ。そんなことを想像しながらはちみつを食べると、喜怒哀楽に富んだ、複雑な味わいになる。
 昔は蜂が怖かった。しかし今は違う。蜂の気持ちがわかる。尊敬の念もある。蜂が生涯かけて集めてくれたはちみつを、今日も私は美味しく召し上がる。親愛なる彼らへ。感謝を込めて、いただきます。

 

(完)

 

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